投資を始めたばかりの方なら、「せっかく始めたNISAなのに、含み損になってしまった…」と不安に感じる瞬間があるでしょう。実は先日、私の会社の同僚からまさにこんな質問を受けました。
「最近NISAが含み損になったんだけど、どうしたらいいの?」
この質問、よく聞かれるものです。特に2024年に始まった新NISA制度をきっかけに投資を始めた方の中には、最近の市場調整で戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
実際、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の今年の動きを見てみると、年初からでも、2025年1月6日の33,928円から3月14日までで約12.4%のマイナスとなっています。
株価が下がると、心配になるのは自然なことです。「これからもっと下がるのでは?」「今売った方がいいのでは?」という不安が頭をよぎります。特に投資経験が浅い方ほど、この感情は強く出るものです。
でも、経験豊富な投資家はこうした下落にあまり動じません。なぜなら、彼らは市場の本質と長期投資の力を知っているからです。今回は、この「含み損」に対する考え方について、実際のデータと経験をもとにお伝えしていきます。
結論:S&P500の含み損は気にせず長期投資を続けよう
結論からお伝えします。S&P500やオルカンなどの優良インデックスファンドを購入しているのであれば、含み損を心配する必要はありません。そのまま放置するのが最適です。この程度の下落は投資では普通のことで、長期的には一時的な現象に過ぎません。
先日、こんな会話がありました。
同僚「最近NISAが含み損になったんだけど、どうしたらいいの?」
私「S&P500やオルカンを買っているならそのまま放置。これくらいの下落はしょっちゅうある。気にするんじゃねぇ」
この回答は短すぎると思われるかもしれませんが、経験豊富な投資家の多くが同じことを言います。彼らは過去に何度も市場の暴落と回復を経験し、一時的な下落に動じていません。
2025年の年初からeMAXIS Slim S&P500は12.4%下落しています。初めて経験する方には大きく感じるでしょうが、株式市場では「日常的な変動」の範囲内です。
投資を始めたばかりの方は下落で不安になるものです。しかし歴史的に見れば、投資期間が長いほどプラスのリターンを得る確率は高まります。
S&P500のようなインデックス投資は、短期的な価格変動を乗り越えて、長期的に企業の成長と世界経済の発展の恩恵を受ける手段です。目先の変動に一喜一憂せず、5年、10年という長期的な視点で考えましょう。
理由:市場変動は投資の自然な一部である
なぜ含み損を気にする必要がないのか?理由は単純です。株式市場の変動は、投資の自然な一部だからです。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の過去データを見てみましょう。2018年7月から2025年3月までの長期チャートでは、価格は決して一直線ではなく、常に上下動しています。
特に印象的な例として、2020年3月には新型コロナウイルスの影響で基準価額が8,700円台まで落ち込みました。当時は多くの投資家が動揺しましたが、その後どうなったでしょうか?わずか1年後には19,000円を超え、2.2倍以上になったのです。
また、2022年にも調整局面があり、17,000円台まで下落しました。それでも2024年には30,000円を超えています。
これらの実例が示すように、短期的な下落は珍しいことではなく、むしろ市場の当たり前の動きなのです。S&P500のような幅広い指数は、過去に何度も10%を超える下落を経験していますが、長期的には上昇トレンドを維持しています。
市場は常に不確実性を織り込んで動いています。企業収益の予想、経済指標、金利動向、地政学的リスクなど、さまざまな要因で日々変動します。しかし長期的に見れば、世界経済は成長し、優良企業の価値は増加する傾向にあります。
投資の本質は、短期的な価格変動を予測することではなく、長期的な経済成長の恩恵を受けることです。これを理解すれば、一時的な下落に過度に反応する必要がないことが分かるでしょう。
短期的な下落と長期的な上昇
市場の変動を詳しく見ると、短期的な下落と長期的な上昇というパターンが浮かび上がります。
eMAXIS Slim S&P500は2018年7月に約10,000円からスタートし、2025年3月には約30,000円になっています。これは約7年で3倍近くの成長です。年率換算すると約17%のリターンとなります。
しかし、この間には何度も調整局面がありました:
- 2018年12月:12,300円 → 8,600円(約30%下落)
- 2020年2月:12,800円 → 8,700円(約32%下落)
- 2022年1月:19,200円 → 17,000円(約11%下落)
- 2022年12月:13,900円 → 17,700円(約27%下落)
- 2024年7月:32,800円 → 27,000円(約18%下落)
これらの下落は当時としては大きく感じられたでしょうが、長期チャートで見るとむしろ「買い場」だったことが分かります。
実際、世界的な投資家ウォーレン・バフェットは「他人が恐れているときに強欲になれ」と言っています。市場が恐怖で支配されているときこそ、冷静な投資家にとってはチャンスなのです。
特に重要なのは、下落後の回復力です。S&P500のような広範な指数は、1年以内に回復することが多いのです。
長期投資の成功の秘訣は、下落時にパニックにならず、むしろその機会を活かすことにあります。これは理論だけでなく、過去のデータが証明している事実です。
インデックス投資の本質を理解する
含み損を恐れずに投資を継続できる秘訣は、インデックス投資の本質を深く理解することにあります。
インデックス投資とは、「市場平均に連動する投資」です。S&P500に投資するということは、アメリカの優良企業500社に分散投資していることになります。これはつまり、個別企業の運命に左右されるのではなく、アメリカ経済全体の成長に賭けているということです。
アップルやマイクロソフト、アマゾンといった企業は、私たちの日常生活に深く根付いています。これらの企業は日々製品やサービスを開発・販売し、利益を生み出しています。短期的な株価変動はあっても、長期的には企業価値の向上が株価に反映されるのです。
歴史的に見ると、S&P500は年平均約10%のリターンを生み出してきました(配当込み)。これは単なる偶然ではなく、企業の生み出す実質的な価値の反映です。企業は利益を上げ、それを株主に還元するか、さらなる成長のために再投資します。どちらも長期的には株主価値の向上につながります。
また、インデックス投資の強みは「複利効果」にあります。アインシュタインは複利を「世界第8の不思議」と呼びました。例えば、年率7%で複利運用した場合:
- 10年で約2倍
- 20年で約4倍
- 30年で約8倍
になります。この力を活かすためには、短期的な変動に惑わされず、投資を続けることが重要です。
S&P500に投資するということは、アメリカ経済の成長という大きな流れに乗るということです。短期的な波の上下に一喜一憂するのではなく、潮流の方向を見極めることが大切です。
具体例:eMAXIS Slim S&P500の過去パフォーマンス
理論や一般論だけでなく、実際のデータを見てみましょう。eMAXIS Slim S&P500の過去のパフォーマンスは、市場変動の実態と長期投資の効果を如実に示しています。
添付資料からは、2018年7月3日の設定日から2025年3月14日までの日次の基準価額が確認できます。設定日の基準価額は10,038円でした。そこから約7年弱で、最新の基準価額は29,711円となっています。これは約196%の成長、つまり投資額が約3倍になったことを意味します。
しかし、この成長は決して一直線ではありませんでした。その間には、何度も大小の調整局面がありました。それらを乗り越えてきたことが重要なのです。
コロナショック時の大暴落と回復
最も印象的な下落と回復の例として、2020年初頭のコロナショックが挙げられます。
2020年2月中旬、eMAXIS Slim S&P500の基準価額は12,861円まで上昇していました。しかし、新型コロナウイルスの世界的流行により、わずか1ヶ月で基準価額は8,645円(2020年3月25日)まで急落しました。この約33%の下落は、多くの投資家にとって恐怖の経験でした。
「もう回復しないのでは?」「経済は長期的に打撃を受けるのでは?」という悲観論が蔓延しました。実際、多くの初心者投資家がパニック売りに走りました。
しかし、その後はどうなったでしょうか?
驚くべきことに、わずか1年後の2021年4月には基準価額が15,000円を超え、2020年末には19,000円台に到達しました。コロナショックの底値から見ると、わずか9ヶ月で2倍以上になったのです。
この急回復の理由は様々ありますが、重要なのは「パニック売り」をせず、保有し続けた投資家だけがこの回復の恩恵を受けたということです。途中で売却してしまった投資家の多くは、「いつ買い戻すべきか」という新たな難問に直面し、結局は上昇相場に乗り遅れてしまいました。
2024-2025年の最近の調整局面
より最近の例として、2024年から2025年にかけての調整局面も見てみましょう。
2024年7月11日、eMAXIS Slim S&P500の基準価額は32,813円という高値をつけました。しかしその後、米国のインフレ懸念や金利動向、企業業績の不透明感などから下落基調となり、2025年2月末には31,000円台、3月14日には29,711円まで下落しました。7月の高値から約9.5%の下落となります。
これは新NISA制度が始まった2024年に投資を始めた方にとっては、初めての大きな調整かもしれません。「これからもっと下がるのでは?」「回復するのだろうか?」という不安は理解できます。
しかし、過去のパターンと比較すれば、この程度の調整は珍しいものではありません。重要なのは、長期的な視点を持ち続けることです。
世界経済、特に米国経済の長期的な成長トレンドが変わっていない限り、一時的な調整は投資機会と捉えるべきでしょう。過去の回復パターンを見れば、市場は必ず元の水準を回復し、さらに上昇してきました。
まとめ:長期投資家としてのマインドセットを養おう
投資の成功には、正しい金融商品の選択も大切ですが、それ以上に重要なのは投資家としての心構え・マインドセットです。
S&P500のようなインデックスファンドで含み損が発生しても、それは長期投資の道のりでの一時的な現象に過ぎません。むしろ「気にするんじゃねぇ」というのが正しい対応なのです。
実際に具体的なアドバイスをまとめると:
- 長期視点を持つ: 投資は短距離走ではなく、マラソンです。一時的な下落に一喜一憂せず、5年、10年、あるいはそれ以上の長期的な視点で考えましょう。
- 定期的な投資を続ける: 市場の下落時こそ、定期的な投資(積立投資)の威力を発揮するときです。市場が下がっているときは、同じ金額でより多くの口数が買えるため、長期的には平均取得単価を下げる効果があります。
- 過度なチェックを避ける: 毎日株価をチェックすると、短期的な変動に振り回されがちです。月に一度程度、または四半期ごとに投資状況を確認する程度で十分です。
- 市場の歴史を学ぶ: 過去の市場の動きを学ぶことで、現在の状況を冷静に判断できるようになります。歴史は繰り返す傾向があります。
- 感情に流されない: 投資において最大の敵は外部ではなく、自分自身の感情かもしれません。恐怖や欲望に流されず、冷静な判断を心がけましょう。
歴史的に見ても、優良な指数は短期的な下落を乗り越えて、長期的には成長を続けてきました。その事実を信じて、投資を続けることが、将来の資産形成への近道となるでしょう。
同僚への「気にするんじゃねぇ」という短い回答には、実はこれら全てのメッセージが込められていたのです。あなたもぜひ、一時的な含み損を恐れず、長期投資家としての適切なマインドセットを養ってください。市場の短期的な波に翻弄されるのではなく、長期的な潮流に乗って資産を育てていきましょう。
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