「米国株が急落」「トランプ氏の関税政策で景気後退か」「アジア市場にも波及」―最近のこんなニュースを見ると、投資を始めたばかりのあなたは不安になっていませんか?
SNSやYouTubeを開けば、「暴落警報!」「投資危険信号点灯中!」といった刺激的なタイトルの投稿で溢れています。せっかく将来のために少しずつ投資を始めたのに、こんなタイミングで大損してしまうのでは…と心配になるのは当然です。
株価の下落が報じられるたびに「投資を続けるべきか」「今すぐ売るべきか」と悩んでいる方へ、この記事では市場の混乱期にこそ持つべき心構えと、メディア報道の真実について解説します。
はじめに結論:人間の「ネガティブ本能」を理解し、コントロールすることが長期投資の成功の鍵
結論から言いましょう。長期投資で成功するための最大の秘訣は、私たち人間に備わっている「ネガティブ本能」を理解し、それをコントロールすることです。
株価下落のニュースに過剰に反応してしまうのは、私たちの脳が危険信号に敏感に反応するよう進化してきたからです。この「ネガティブ本能」は生存のためには有用でしたが、投資の世界では私たちの判断を曇らせる障害となります。
老後資金を作るための長期投資であれば、この本能的な反応を自覚し、理性的な判断ができるようになる必要があります。感情に流されて投資方針をコロコロと変えることこそが、長期的なリターンを損なう最大の原因なのです。
これから解説する内容を実践することで、自分の「ネガティブ本能」と上手に付き合いながら、市場の混乱期にも冷静さを保ち、長期的な資産形成の道を歩み続けることができるようになります。
なぜ市場下落のニュースに過剰反応してしまうのか
メディアとSNSの情報発信の意図を理解する
なぜ投資に関するネガティブなニュースやコンテンツがこれほど多いのでしょうか?その背景には情報発信者側の「意図」があります。
例えばSNSの投稿者は、「株価暴落!危険信号!」といった刺激的な内容を発信すると、多くの反応を得られてフォロワーが増える可能性が高まります。YouTubeクリエイターなら、センセーショナルなタイトルで多くの視聴を集め、広告収入を増やせます。
ニュースメディアも同様です。BBCの記事にあるように「米株式市場は10日、ダウ工業株平均が前週末比890.01ドル(2%)安となるなど急落」といった見出しは、平凡な「株価が上昇」という見出しよりも多くのクリックを集めます。
つまり、彼らは必ずしも「あなたの投資を成功させること」を第一の目的としているわけではないのです。
人間の「ネガティブ本能」の仕組みとその影響
では、なぜ私たちはそうしたネガティブな情報に引き寄せられ、過剰に反応してしまうのでしょうか?
それは人間に備わった「ネガティブ本能」が関係しています。私たちの祖先は、危険に敏感に反応しなければ生き延びることができませんでした。突然のクマの出現や敵対する部族の襲撃に備えて、常に警戒していなければならなかったのです。危険を見逃して死ぬリスクは、些細なことに過剰反応して損をするリスクよりも遥かに大きかったのです。
この本能は現代社会でも私たちの中に生き続けています。危険や脅威を知らせる情報に対して、私たちの脳は特別な注意を払うようプログラムされているのです。ニュースを見ても、事故や災害、紛争などのネガティブな情報が多いのはそのためです。
投資の世界でも同じことが起きています。「株価暴落」「景気後退の懸念」といったネガティブな情報に、私たちは本能的に強く反応してしまうのです。今回のトランプ大統領の発言による市場の混乱も、実際の経済的影響以上に投資家のネガティブ本能を刺激し、過剰反応を引き起こしている側面があります。
この本能的反応は自然なものですが、長期投資においては大きな障害となります。一時的な下落で感情的に売却してしまえば、その後の回復の恩恵を受けられなくなるからです。ですから、自分のネガティブ本能を理解し、それをコントロールする方法を学ぶことが極めて重要なのです。
最近の市場下落の実態とその背景
実際に今回の市場下落の内容を見てみましょう。これを理解することで、メディア報道の実態と市場の反応の関係がより明確になります。
トランプ大統領の関税政策と市場の懸念

BBCの記事によると、今回の株価下落のきっかけは、トランプ大統領がFOXニュースのインタビューで、自身の関税措置による景気後退の可能性を否定しなかったことでした。
トランプ大統領は「我々は非常に大きなことをやっているのだから、過渡期はある。我々はアメリカに富を取り戻そうとしている」と述べ、経済をめぐる懸念があることを認めるような発言をしました。
これに対して投資家たちは、トランプ氏が導入を計画している中国やメキシコ、カナダへの追加関税が物価上昇を招き、アメリカ経済の成長を鈍化させるのではないかと懸念を強めました。
テック株を中心とした急落の波及効果
この懸念を受けて、10日のニューヨーク株式市場では、S&P500種株価指数が2.7%安、ダウ工業株平均が2%安で取引を終えました。特にハイテク株の多いナスダック指数は4%安と大きく下落しました。
テスラ株は15.4%、半導体大手エヌビディアは5%超下落し、メタ、アマゾン、アルファベットなどの主要テック株も急落しました。
さらに、この下落はアジア市場にも波及し、東京株式市場の日経平均株価が1.7%安、韓国の総合株価指数(KOSPI)は1.5%安、香港株式市場のハンセン指数が0.7%安となりました。
専門家の見方と市場の過剰反応
注目すべきは、この市場の反応に対する専門家の見方です。
投資銀行サクソの主任投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「トランプ氏が株式市場の大統領だという、これまでの考え方が再検討されつつある」と語っています。
また、金融サービス会社KCMトレードの主任市場アナリスト、ティム・ウォータラー氏は「景気後退をめぐる話は時期尚早かもしれないが、景気後退が現実のものになる可能性が示されるだけで、投資家たちは守りに入るものだ」と指摘しています。
一方で、トランプ氏の経済顧問ケヴィン・ハセット氏は「今後の経済について極めて強気でいられる理由は、数多くある」と述べ、関税政策はすでに製造業と雇用をアメリカにもたらしていると主張しています。
ここで重要なのは、市場は往々にして「可能性」や「懸念」に対して過剰に反応する傾向があるということです。確定した事実ではなく、将来への不安に基づいた反応が市場の大きな変動につながっているのです。
長期投資家としての対応策
短期投資家と長期投資家の視点の違い
今回のような市場の下落に対する反応は、投資のスタイルによって大きく異なります。
短期投資家(トレーダー)にとっては、日々の価格変動が利益直結の問題です。レバレッジをかけた投資や短期的な売買を繰り返す戦略をとっている場合、こういったニュースに敏感に反応する必要があるでしょう。
しかし、本ブログで推奨している「老後のための資産形成」や「将来の資金作り」を目的とした長期投資家にとっては、状況が異なります。
長期投資では、短期的な市場の変動よりも、5年、10年、あるいは20年といった長期的な視点での資産の成長を重視します。その観点からは、一時的な市場の下落はむしろ「割安に株を買える機会」とも言えるのです。
歴史から学ぶ市場暴落と回復のパターン
歴史を振り返ると、株式市場は常に上昇と下落を繰り返しながらも、長期的には上昇を続けてきました。リーマンショック、ITバブル崩壊、コロナショックなど、一時的には大きな下落があっても、市場は必ず回復してきたのです。
例えば、リーマンショック時にはS&P500は約50%下落しましたが、その後の10年間で4倍以上に成長しました。コロナショック時にも30%以上の急落がありましたが、その後の2年間で過去最高値を更新しています。
今回の下落も、長期的な視点で見れば同様のパターンを辿る可能性が高いと考えられます。トランプ氏の関税政策の影響が一時的に市場を混乱させていますが、企業の収益力が根本的に損なわれない限り、長期的な成長トレンドは続くでしょう。
情報との健全な付き合い方と「FACTFULNESS」の実践
長期投資家としての成功のためには、情報との付き合い方と自分のネガティブ本能のコントロールが重要です。
- 情報源を選別する:センセーショナルな見出しや過度に刺激的な内容を避け、冷静な分析を提供する情報源を選びましょう。自分のネガティブ本能を刺激する情報源は積極的に遠ざけることも必要です。
- 「FACTFULNESS」を実践する:ハンス・ロスリングの『FACTFULNESS』は、人間が本能的に持つ10の認知バイアスと、それを克服するための思考法を教えてくれる素晴らしい本です。例えば「ネガティビティ本能」は私たちが否定的なニュースに過剰反応することを指摘し、それを事実とデータに基づいて冷静に判断する方法を提案しています。この思考法は投資判断においても非常に有効です。
- 投資判断の根拠を再確認する:市場が混乱しているときこそ、自分の投資目的と時間軸を思い出しましょう。長期の資産形成が目的なら、短期的な変動に一喜一憂する必要はありません。感情ではなく、事実とデータに基づいて判断することを心がけましょう。
- 投資の頻度を定期的に:毎月決まった日に決まった金額を投資する「ドルコスト平均法」を実践すれば、市場の上下にかかわらず、結果的に平均的なコストで投資を続けることができます。これは感情的な判断を排除する素晴らしい方法です。
- ニュースの「断食」を試みる:投資関連のニュースを見ることで不安になるなら、一定期間「ニュース断ち」をしてみるのも一つの方法です。長期投資において、日々のニュースチェックは必ずしも必要ではありません。自分のネガティブ本能を過度に刺激しないよう、意識的に情報摂取をコントロールすることが重要です。
まとめ:ネガティブ本能を克服し、市場の混乱期をチャンスに変える
今回の市場下落から私たちが学べる最大の教訓は、私たち人間のネガティブ本能と上手に付き合う方法を身につけることです。
- 自分のネガティブ本能を自覚する:人間は危険や脅威に敏感に反応するよう進化してきました。株価下落のニュースに不安を感じるのは本能的反応であり、あなただけが特別に弱いわけではありません。この反応を自覚することが、克服への第一歩です。
- メディアの意図を理解する:ニュースやSNSは「注目を集めること」を優先し、私たちのネガティブ本能に訴えかける不安を煽る傾向があります。その意図を理解した上で、冷静に情報を取捨選択しましょう。
- 事実に基づいた思考を鍛える:ハンス・ロスリング氏の名著『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は、私たちがいかに本能的に世界を誤って認識しがちかを教えてくれます。この本で紹介されている「事実に基づいた思考法」は投資の世界でも非常に役立ちます。データを冷静に分析し、感情ではなく事実に基づいて判断する習慣をつけましょう。
- 市場下落を感情ではなくデータとして捉える:長期投資の観点からは、市場の下落は「良い企業の株式を割安に買える機会」でもあります。恐怖という感情ではなく、数値データとして冷静に捉える発想の転換が重要です。
- 投資計画を感情の盾にする:あらかじめ決めておいた投資計画は、感情的な判断から自分を守る盾になります。市場の混乱期にこそ、この計画を守り抜く意志が試されます。
FACTFULNESSは名著なので一度読んでみることをおすすめします。
トランプ大統領の関税政策による今回の市場の混乱も、長い投資の旅路の中では一つの出来事に過ぎません。あなたのネガティブ本能が「危険!逃げろ!」と叫んでいても、理性的な判断ができれば、この状況を投資チャンスに変えることができるのです。
ネガティブ本能との付き合い方を学び、感情と理性のバランスを取れる投資家になることで、市場の混乱期も乗り越え、長期的には大きなリターンを得られるでしょう。今こそ、投資家として、そして一人の人間として成長するための絶好の機会なのです。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。このブログでは引き続き投資初心者のあなたに向けて、わかりやすく実践的な情報を定期的に配信していきます。ブログのシェアやコメントお待ちしております。

ではまた、次の記事でお会いしましょう。ロキでした。
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