「円安が進んでいるけど、今は海外投資のタイミングじゃないのかな…」 「円高になるまで待った方がいいのかな?」 「為替の影響って本当はどのくらいあるの?」
海外投資を考えるとき、多くの投資家がこのような悩みを抱えています。特に昨今の為替相場の変動が大きい環境下では、投資のタイミングに悩む声をよく耳にします。
実は、これは投資を始めたばかりの方だけでなく、ある程度の投資経験がある方でも同じように感じる悩みです。なぜなら、為替の影響は投資の成果に大きく影響するように見えるからです。
しかし、本当に為替のタイミングを考えることは重要なのでしょうか?今回は、人気の投資信託「eMAXIS Slim S&P500」の実績データを基に、為替変動が投資に与える影響について、具体的に解説していきます。
これから投資を始めようと考えている方はもちろん、すでに投資を始めている方も、為替変動に惑わされることなく、より確信を持って投資を続けられるようになるはずです。
はじめに結論:インデックス投資は為替を気にせず淡々と続けるのが最適解
結論からお伝えすると、インデックス投資において為替のタイミングを気にする必要はありません。むしろ、為替のタイミングを考えすぎることで、投資の機会を逃してしまう可能性が高くなります。
なぜそう言えるのでしょうか?主に3つの理由があります:
- 為替相場の予測は、プロの投資家でも極めて困難です。円高になるか円安になるかを正確に予測することは、ほぼ不可能と言えます。
- 資産形成の段階(お金を投資する時期)と資産を取り崩す時期では、為替の影響は真逆になります。
- 資産形成期は円高の方が有利(安く買える)
- 資産取り崩し期は円安の方が有利(高く売れる)
- 長期投資においては、為替変動の影響は時間とともに平準化される傾向があります。実際にeMAXIS Slim S&P500のデータを見ても、この傾向は明確に表れています。
つまり、私たちの多くが悩む「今は円安だから投資を控えめにしよう」「円高まで待とう」といった考えは、実は投資の成功を遠ざけてしまう可能性が高いのです。
それでは、なぜこのような結論に至るのか、具体的な例を交えながら詳しく見ていきましょう。
身近な例で理解する円安・円高の仕組み
為替レートの基本的な仕組み
為替レートは、簡単に言えば「お金の交換比率」です。例えば、1ドル=150円の時は、1ドルを手に入れるのに150円が必要という意味です。
この交換比率は、日々刻々と変化しています。円安とは「円の価値が下がること」を意味し、同じ1ドルを手に入れるのにより多くの円が必要になります。反対に、円高とは「円の価値が上がること」で、少ない円でより多くのドルが手に入る状態を指します。
人気スニーカーで考える円安・円高の影響
では、この為替の影響を身近な例で考えてみましょう。アメリカで人気のスニーカーを例に取ると:
- アメリカでの価格:100ドル
- 円安時(1ドル=150円)での購入:15,000円
- 円高時(1ドル=100円)での購入:10,000円
同じスニーカーでも、為替レートによって5,000円もの価格差が生まれます。これは投資にも同じことが言えます。
資産形成と資産取り崩しで異なる為替の影響
この例を投資に当てはめると、次のようになります:
資産形成期(買う時)
- 円高時:海外の株式を「安く」購入できる
- 100ドルの株式を10,000円で購入
- 円安時:海外の株式が「割高」になる
- 100ドルの株式に15,000円必要
資産取り崩し期(売る時)
- 円安時:日本円に換算したときの資産額が増える
- 100ドルの株式が15,000円に
- 円高時:日本円換算での資産額が減る
- 100ドルの株式が10,000円に
つまり、資産を形成している段階(投資信託を買っている時期)は円高の方が有利で、資産を取り崩す段階(投資信託を売って現金化する時期)は円安の方が有利となります。
しかし、ここで重要なポイントは、為替レートの変動を正確に予測することは、プロの投資家でも極めて困難だということです。円高になるのか、円安になるのか、それがいつなのかを当てることは、ほぼ不可能と言えます。
そのため、為替のタイミングを考えすぎることは、かえってリスクを高めることになりかねません。次のセクションでは、実際のeMAXIS Slim S&P500のデータを見ながら、この点について詳しく確認していきましょう。
eMAXIS Slim S&P500から見る為替変動の実際の影響
過去5年間の運用実績分析
eMAXIS Slim S&P500の基準価額の推移を見ることで、為替変動が実際の投資にどのような影響を与えるのかが分かります。
このグラフから、いくつかの重要なポイントが見えてきます。
まず、運用開始時(2018年7月)の基準価額は10,038円でしたが、その後緩やかな上昇トレンドを描いています。しかし、この期間中にいくつかの大きな変動がありました。
特に注目すべきは2020年のコロナショック期です。2020年2月に12,861円まで上昇していた基準価額は、わずか1ヶ月で9,869円まで急落しました。約23%もの下落です。しかし、その後の回復も急速で、2020年末には13,000円を超える水準まで回復しています。
また、2022年には円安が大きく進行した時期がありました。この期間、基準価額は18,301円から20,365円まで上昇しています。これは円安による押し上げ効果も一因となっています。
円安・円高局面での投資リターン比較
このデータから、為替変動が投資にもたらす影響について、以下の重要な示唆が得られます:
- 短期的には大きな変動がある
- コロナショック時の23%下落
- 円安進行時の急速な上昇
- 長期的には上昇トレンドを維持
- 運用開始から2023年末までで約2.4倍に
- 大きな下落を経験しても、長期では回復する傾向
- 為替変動の影響は両面ある
- 円安時は基準価額を押し上げる効果
- 円高時は基準価額を押し下げる効果
しかし、最も重要なのは、これらの変動を事前に予測することが極めて困難だという点です。例えば、コロナショック時の急落や、その後の急速な回復を正確に予測できた投資家はほとんどいませんでした。
また、2022年の円安進行についても、その規模と速度を正確に予測することは不可能でした。このような予測の難しさこそが、為替のタイミングを図るのではなく、長期的な視点で定期的に投資を続けることの重要性を示しています。
長期投資で為替の影響が薄まる3つの理由
複利効果と為替変動の関係性
アメリカ株式市場に投資をすると、企業の成長による株価の上昇に加えて、配当の再投資による複利効果が期待できます。S&P500の場合、過去の平均で年率7〜8%程度のリターンを生み出してきました。
この複利効果の力は、時間とともに大きくなっていきます。一方、為替変動は上下どちらにも振れる性質があり、長期的に見ると平均化される傾向があります。つまり、投資期間が長くなればなるほど、複利効果の恩恵が為替変動の影響を上回っていく形になります。
企業活動による自然なヘッジ効果
S&P500に含まれる企業の多くは、グローバルに事業を展開する多国籍企業です。例えば、アップルやマイクロソフトといった企業は、世界中で製品やサービスを販売し、収益を得ています。
このような企業は、為替変動に対して自然なヘッジ機能を持っています:
- 円安時:海外売上の円換算額が増加
- 円高時:海外での仕入れコストが減少
つまり、企業自身が為替変動に対する適応力を持っており、これが投資家のリスクを軽減する要因となっています。
ドルコスト平均法の威力
定期的に一定額を投資する「ドルコスト平均法」を活用することで、為替変動のリスクを平準化することができます。
例えば、毎月3万円ずつS&P500に投資する場合:
- 円高時:より多くのドル建て資産を購入できる
- 円安時:購入できるドル建て資産は少なくなる
このように、自動的に「円高の時には多く買い、円安の時には少なく買う」という調整が行われます。これは、長期的に見て効率的な投資方法となります。
結果として、これら3つの要因が組み合わさることで、長期の資産形成における為替変動の影響は限定的なものとなります。重要なのは、市場の一時的な変動に惑わされることなく、投資を継続することです。
まとめ:投資を成功に導く3つのポイント
為替の影響を考えすぎて、海外投資のタイミングを逃してしまう方は少なくありません。しかし、ここまで見てきたように、長期投資において為替のタイミングを気にする必要はないことが分かりました。
最後に、成功する海外投資のための3つのポイントをまとめます:
- 為替変動は資産形成の段階によって捉え方を変える
- 資産形成期(買う時期)は円高の方が有利
- 資産取り崩し期(売る時期)は円安の方が有利
- しかし、為替の上下を予測することは極めて困難 → だからこそ、為替を気にせず淡々と投資を続けることが重要
- 長期投資では為替変動の影響は平準化される
- eMAXIS Slim S&P500の実績データが示すように、短期的な変動は大きくても長期では上昇トレンド
- コロナショックのような大きな下落も、長期的には回復
- 企業の成長による複利効果が、為替変動の影響を上回る
- タイミングを気にせず、定期的な積立投資を続ける
- 円高の時は自動的により多くの外貨建て資産を購入
- 円安の時は自動的に購入額を抑制
- 市場や為替の下落は、むしろ投資機会として捉える
「いつ投資を始めるべきか」という疑問に対する答えは、「今」です。なぜなら、投資の成否を分けるのは「いつ始めるか」ではなく、「いかに継続するか」だからです。
特に若い世代の方々は、資産形成のための時間が十分にあります。この時間の力を最大限活用するためにも、為替のタイミングを気にしすぎることなく、着実に投資を続けていくことをお勧めします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。このブログでは引き続き投資初心者のあなたに向けて、わかりやすく実践的な情報を定期的に配信していきます。ブログのシェアやコメントお待ちしております。
ではまた、次の記事でお会いしましょう。ロキでした。
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